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10月 12 2020

預貯金の仮払い制度

預貯金の仮払い制度

1 預金債権は、相続開始と同時に当然に相続人に分割され、相続人は分割により自己に帰属した債権を単独で行使できるとされてきましたが、平成28年最高裁決定で判例が変更されて預貯金債権も遺産分割の対象に含まれると判断されました。この決定により相続人全員の同意がない限り預貯金の払い戻しを受けることができなくなりました。

相続人による個別の権利行使ができなくなったことで、医療費、葬儀費用、納税資金、被相続人に扶養されていた者の生活費などが支払えないという不都合に対する立法的手当として、今回の相続法改正により遺産分割前でも単独で預金を払い戻すことのできる仮払い制度が創設されました。

2 払戻しが可能な金額ですが、まず預貯金債権の相続開始時の残高に3分の1を掛け、その部分に各相続人の法定相続割合を乗じた額(相続開始時の預貯金債権の額×1/3×法定相続分)または150万円のうちいずれか小さな金額を払い戻すことができると定められました。

払戻し可能額は、金融機関ごとに150万円が限度額とされています。

3 仮払い制度に基づいて払戻しを受けた預貯金については、相続人が遺産の一部の分割により取得したものとみなされます。したがって、遺産分割協議においては、当該預貯金の払い戻しを受けたことを前提に、残りの財産について遺産分割することになります。

また、仮払い制度を利用した相続人は相続を単純承認したものと扱われますので、安易に利用して相続放棄ができなくて困らないように注意する必要があります。

4 仮払い制度は、緊急の資金調達に便利な制度ですが、そういった用途以外にも相続人全員の同意を要しないことから、相続人に行方不明者がいる場合とか認知症の相続人がいる場合など遺産分割手続きに時間を要するときにも活用のできる制度だと思われます。

 

10月 03 2020

整骨院での治療

交通事故による治療費は、必要かつ相当な範囲であれば、加害者に賠償金として請求することができます。

医師が行う治療は、通常、必要かつ相当な範囲の治療として認められますが、整骨院で施術を行う柔道整復師には医師資格がないため、必要かつ相当な範囲の治療であるのか問題になることがあります。

そこで、整骨院に通院する際の注意点を説明します。

2)注意点

① まず整骨院ではなく、病院に受診すること。

交通事故に遭われたら、まず病院に受診してください。整骨院では検査や診断書を作成することができません。事故から時間が経過してから受診すると交通事故と怪我の因果関係を立証するのが困難になります。

② 事前に医師から整骨院通院の許可を得ておくこと。

整骨院に通院する際には、医師に相談して、整骨院通院の了承をもらってください。すでに通院している場合には、医師に通院していることを話して、カルテに通院していることを記載してもらっておくとトラブル防止につながります。

③ 病院への通院は、治療が終了するまで続けること。

後遺障害等級認定の申立をするには後遺障害診断書が必要になります。しかし、整骨院では後遺障害診断書を作成することができません。病院への通院を続けていれば、医師が治療経過を把握して、後遺障害診断書を作成することができます。また、整骨院の施術が治療の一環として行われていたと評価されることにもなります。

10月 03 2020

交通事故解決の流れ

1 交通事故発生時の対応

① 事故現場では被害者の救助活動が最優先です。まずは救急車を手配し、警察に連絡します。警察に連絡しないで、示談してほしいと加害者から頼まれることがありますが、必ず警察に連絡してください。警察に通報しておかないと自動車安全運転センターから「交通事故証明書」を発行してもらえません。
軽微な怪我であっても、何日か経って痛みが増すことがありますので、物損事故としないで、人身事故として届けましょう。

② 次に、ご自身が契約している保険会社に交通事故に遭ったことを報告します。弁護士に相談したい方は、弁護士費用特約が利用できるか保険会社に確認しましょう。

③ 警察から実況見分調書を作成するための立会を求められたり、リサーチ会社から調査への協力を依頼されることがあります。示談交渉の際の証拠にもなりますので、できるかぎり弁護士に相談しながら進めましょう。

2 治療

① 事故直後に必ず病院で医師の診断を受けて、治療を始めてください。
ずっと我慢して治療が遅れると事故との因果関係が疑われてしまいます。

② 一般的には自由診療によりますが、健康保険を使った方がよい場合があります。例えば、被害者の過失がある場合、過失に相当する部分については被害者の負担になりますので、健康保険を使って治療費を抑えた方が最終的に受け取れる賠償金が増えることがあります。
また、加害者が任意保険に加入していない場合、できる限り自賠責の範囲内で治療費を抑えるため、健康保険を使った方がいいでしょう。

③ 整骨院で治療を受けるときは、主治医の許可をもらってください。整骨院に通院する場合でも、定期的に医師の診察を受けてください。

④ 保険会社が治療費の支払いを打ち切りますと一方的に通告してくることがよくあります。しかし、治療を続けるかどうかは担当医とよく相談して決めればいいことで、保険会社のいいなりになる必要はありません。
保険会社に治療の継続を交渉しますが、保険会社の同意が得られない場合は、自費で通院治療を続け、後日、保険会社に請求することになります。

3 症状固定

① 治療を続けても効果が得られなくなった状態を症状固定といいます。症状固定の診断ができるのは、主治医だけですので、主治医とよく話し合ってください。

② 後遺障害等級認定のための申立をするか検討を行います。申立をしない場合は、保険会社と賠償金の示談交渉に移ります。

4 後遺障害の認定

① 主治医に後遺障害診断書を作成してもらいます。この診断書が後遺障害の認定のために主な判断資料になりますので、作成に当たっては弁護士に相談したうえ、主治医とよく話し合って記載漏れがないようにしましょう。

② 認定結果に不満がある場合には、異議の申し立て等により争うことができます。

5 示談交渉

① 保険会社から治療費、通院交通費、休業損害、逸失利益、慰謝料などの項目ごとに損害額が提示されます。賠償金の算定については、裁判が判決する場合の算定基準(裁判基準)が被害者に最も厚くなっています。
しかし、保険会社から提示される金額は、裁判基準よりも低くなっていますので、保険会社と合意する前に弁護士に相談してください。弁護士は、裁判所基準にしたがって交渉しますので、賠償金が増額できる可能性が高いです。

② 示談交渉がまとまらない場合は、交通事故紛争処理センターで和解斡旋等を受けたり、裁判を提起することになります。

 

9月 29 2020

外貌醜状と後遺障害

1 外貌醜状とは

頭部、顔面部、頸部など日常的に露出する部分に傷跡が残ることをいいます。

傷跡ですから運動機能の障害にならないこともありますが、傷跡が残った部位によっては心理的に社会生活に支障を及ぼします。

したがって、後遺障害として認定されるには心理的に社会生活に支障を及ぼす程度に、傷跡が人目に付くものである場合に限られます。

外貌醜状は傷跡のある部位と大きさによって後遺障害等級が7級から14級に認定されます。通常、後遺障害等級の認定手続きは、書面審

査によって行われますが、外貌醜状に関しては、損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所で面接を実施し、傷跡の形状や色の確認が行わ

れます。

2 逸失利益・慰謝料

醜状障害は、身体機能の観点からは、労働能力の喪失が認められないとしても、対人関係の円満な形成が阻害されれば、社会生活に影響を

及ぼすことが考えられるため、労働能力の喪失が認められます。例えば、醜状痕のため配置転換させられたり、職業選択の幅が狭められる

など直接に影響を及ぼすおそれがある場合には、被害者の性別、年齢、職業等を考慮のうえ、一定の労働能力喪失が認められやすくなりま

す。労働能力に直接の影響が認められなくても、対外活動が消極的になって間接的に労働能力に影響を及ぼすおそれが認められる場合

は、労働能力の喪失が認められなくとも、後遺障害慰謝料の加算事由として考慮される可能性があります。

9月 29 2020

交通事故の示談金交渉~慰謝料の算定基準を知る

示談金の算定基準

1)交通事故が発生した場合、慰謝料等の損害賠償額を計算する際、自賠責基準・任意保険基準・裁判基準(弁護士基準)の3つの基準が存在します。

① 自賠責基準

自賠責基準とは、自動車損害賠償保障法に基づく自賠責保険金を算定するときに用いられる基準です。自賠責保険は被害者の損害を最低限度保障する制度であり、3つの基準の中で最も低くなっています。したがって、賠償金として不足する部分は任意保険による上乗せが予定されています。

② 任意保険基準

各保険会社が設けている賠償金の支払基準です。あくまでも保険会社の社内基準であり、非公開とされているので、基準の詳細はわかりまんが、おおむね自賠責基準と裁判基準の間に設定されていると考えられます。

② 裁判基準(弁護士基準)

過去の裁判例の集積から一定の基準をまとめたものであって、裁判所が判決をする場合にも、この基準が目安となっています。

自賠責基準<任意保険基準<裁判基準(弁護士基準)の順で基準が高くなっており、弁護士が保険会社と示談交渉をする場合には、この基準に基づいて賠償金を請求しています。

2)弁護士が交渉に当たらないときの保険会社の姿勢

法律相談では3つの基準を説明し、保険会社からの提示されている賠償金額を裁判基準で計算し直して相談者に提案しています。相談者によっては、自分で交渉しますと言って、相談を終えられる方もいます。しかし、自分で交渉してもほとんど増額が認められないため、再び相談に来所されます。保険会社としては弁護士が代理人についたときに限って、裁判基準による交渉に応じてくれるようです。

保険会社の姿勢には納得できませんが、現実問題としては、弁護士に依頼することを検討する場面であるといえます。

 

9月 28 2020

交通事故の示談交渉の進め方

1)誰が示談交渉を進めるのか?

ご自身で示談交渉をされてもかまいませんが、通常、加入している保険会社に示談交渉を任せることが多いかと思われます。保険会社の担当者が相手の保険会社と交渉をしてくれますので、合意した示談内容に不満がなければ、ご自身の負担も軽くすみます。

ただし、あなたに過失がない場合は、保険会社が示談交渉を代行することができないので、ご自身で交渉をするか、弁護士に依頼するか決める必要があります。

2)相手から提案された示談案に不満がある場合、どうしたらよいのか?

相手の保険会社からは、治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料などの項目別に損害額が提示されます。治療費や通院交通費は実費精算なので特に問題になることは少ないですが、休業損害や慰謝料額が低すぎると不満を抱かれる方が多いです。

特に慰謝料に関しては、自賠責基準、任意保険基準、裁判基準の3つの基準があり、保険会社から低い基準で提案されていることがかなり知られてきましたので、この金額で合意してよいのかと迷われるかと思います。

そんなときは、損害賠償金の示談案に合意しないで、まずは相談に来てください。裁判基準に従った賠償額を説明させていただきます。

3)弁護士に相談するタイミング

過失割合や後遺障害等級が認められるか否かが示談金額に影響を及ぼします。

物損事故は修理代金で相手方と合意ができても、過失割合で争いがある場合は、弁護士に相談した方がよいでしょう。弁護士費用特約が使えない場合、弁護士費用を負担してでも弁護士に依頼するか否かまず相談してください。

人身事故の場合は、後遺障害等級認定の申立をするかどうかが重要なポイントです。後遺障害等級認定の申立てをするか否か弁護士に相談することをお勧めします。ただ、後遺障害が認められるためには、治療の段階から弁護士のアドバイスを受けた方がよい場合がありますので、できる限り早い段階で相談をされて見通しを立てることが望ましいです。

7月 28 2020

ニュースレター発行

当事務所では年4回、ニュースレターを発行しています。

身近な法律知識、最新の法改正など皆様のお役に立つ情報を提供しておりますので、

購読(無料)をご希望の方はご連絡ください。

6月 16 2020

自己破産以外に奨学金の滞納を解決する方法はありますか?

借金の相談を受けるとサラ金などの利用による負債と並んで

奨学金の返済を滞納している方が一定割合でおられます。

300万円とか400万円とかかなり高額です。

滞納者は30万人を超えるとの報告もあり、大きな社会問題です。

滞納状態に陥ったら

① 返還期限猶予

② 減額返還制度

を利用できないか検討しましょう。

自己破産は最後の手段です。

注意しないといけないのは、自分が免責になっても

連帯保証人、多くの場合、親や親族がなっていると思いますが、

連帯保証人に請求が行われるということです。

単に返済者が変わるだけという結果にならないように

連帯保証人と奨学金の返済をどのように返済していくのかよく話し合っておく必要があります。

6月 07 2020

2度目の自己破産は許されるのか?

2度目の自己破産が認められるのでしょうか?

破産法によれば、浪費・賭博行為と並んで

免責の許可から7年以内に免責許可の申立てがあったこと

が免責不許可事由と規定されています。

したがって、7年を経過していれば、形式的には免責不許可事由には当たりませんが、

安易な破産制度の利用を防ぐため、当然、免責を認めるハードルは高くなります。

過去に自己破産の経歴のある相談者に対しては

少額予納管財事件になるおそれがあるので、

あらかじめ予納金を準備するように指導しています。

また、任意整理や小規模個人再生であれば、免責不許可事由の適用を受けないので、

情状によってはその利用を検討することになります。

6月 01 2020

自己破産すると養育費の支払義務も免責されますか?

交通事故の賠償債務で書いたように、破産法にはいくつかの非免責債権が規定されています。

養育費は、親の子どもに対する扶養義務に基づくものであって、

子どもの健全な成長のために必要不可欠な権利ですので、非免責債権の一つとされています。

しかし、非免責債権だからといって、滞納された養育費を支払ってしまうと

偏頗弁済とみなされてしまうおそれがあります。

そこで、破産手続き後に滞納された養育費を支払うことになりますが、

従来の養育費の金額を支払うのが経済的に困難な場合、

養育費の減額を交渉したり、調停を申立てすることもできますので、弁護士に相談してください。

 

 

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